第2章 刑事裁判権

1.韓国政府の裁判権行使制限

編集者 注)刑事裁判権は大きく専属的裁判権と競合的裁判権に分けられる。

専属的裁判権は韓米両国の法令の差異でどちらか一方の国だけが処罰できる犯罪、例えば、米国の法には抵触しないが韓国の法にだけ抵触する時、韓国政府は専属的裁判権を持つようになる。反対の場合には米国が専属的裁判権を行使する。

競合的裁判権は、韓米両国がともに裁判権を行使できる犯罪に適用される。ここで重要なことは、どちら側が1次的裁判権を行使するかの問題だが、協定上で大部分の犯罪は韓国政府が1次的裁判権を行使できる。

1)合意議事録 第22条2項

 大韓民国当局は、合衆国当局が適当な場合に合衆国軍隊の構成員、軍属及び彼らの家族に対して課することのできる行政的及び懲戒的制裁の有効性を認定し、合衆国軍当局の要請によって裁判権を行使する権利を放棄することができる。

 韓国政府が専属的裁判権を持っている犯罪に対して、米国が要請すれば韓国政府はその権利を放棄することができるようになっている。これは、どちらか一方が行使する専属的裁判権は、相手国が干渉できない排他的権利であることに照らして非常に不合理な条項だ。また、協定には「放棄することができる」と規定し、米軍の要請に対して韓国政府の裁量権があるかのようになっているが、現実的な韓米関係で米国が要請する場合、韓国側が拒否するケースがほとんど無いため、事実上「放棄する」と見るべきだろう。

2)本協定 第22条3項(3)

 第1次的権利を持つ国家の当局は、他方の国家がこのような権利放棄を特に重要だと認定する場合、その他方国家の当局から、その権利放棄の要請があれば要請に対して好意的考慮をしなければならない。

 韓米双方ともに裁判権を行使できる競合的管轄権の場合、韓国政府に1次的裁判権があったとしても、米国が要請すれば韓国は裁判権を放棄せねばならない。67年の韓米行政協定が締結された後、韓国が裁判権を行使したのは全体米軍犯罪の0.7%と極めて低いのは、このような条項と無関係ではない。

【事例】 韓国の裁判権に干渉する駐韓米軍

96年4月、駐韓米軍司令部は、韓国検察が捜査中である米軍被疑者の不起訴処分を要請する書簡を送った。

 駐韓米軍司令部法務監ブラント・グリーン大佐は、さる1月12日に法務部検察4課に送った書簡で、『米軍犯罪に対する韓国政府の起訴率があまりにも高い』、『傷害が全治2−3週の軽い事件は除いて、特別に重要な事件だけ起訴権を行使してくれ』と要求した。これは排他的な裁判権行使に干渉する傲慢なものであり、韓国の主権を侵害する行為だ。

2.意のままである「公務遂行中」

第22条に対する了解事項(第3項(イ)に関する合意議事録)

合意修正されない限り(米軍当局が提示する公務)証明書は決定的だ。

米軍が公務遂行中に犯した事件や犯罪に対しては、韓国政府は刑事裁判権を持てず、裁判権は米国にわたる。

 ここで重要なことは公務に対する判断基準だ。米軍犯罪が発生した場合、米軍当局は自国兵士保護のため公務だと主張するのが常で、公務に対する合理的判断基準があるべきである。しかし協定は、公務に対する韓国と米国間の意見が異なる場合、終局的に米軍当局が提示する公務証明書の効力が決定的だと規定し、事実上公務に対する判断が米軍に委ねられているわけだ。例えば、米軍犯罪が発生した時、明白な犯罪行為であるにも拘わらず、米軍当局が公務だと言い張れば、事件自体が正当な公務によるものになり韓国政府は処罰できないようになる。

 米日行政協定の場合、公務に対する日本と米国の意見差異が発生する場合、最終判断は日本の裁判所がするようになっており、主権国家としての威信を守っている。

【事例】 三母娘、監禁暴行事件

 94年10月25日の夜、ソウルの漢南洞外人アパートで、米憲兵に韓国人の三母娘が無差別暴行される事件が発生した。米軍人と国際結婚した娘(薜銀河氏:40歳)の家を訪ねた金グンスン氏(68歳)が、「米軍物品販売商」という汚名を着せられ、米憲兵に暴行を受けて連行されたのだ。これに抗議した娘の薜銀洙氏(30歳)と薜銀河氏は、グリム中尉など米憲兵4名によって暴行を受け、強制的に手錠を掛けられたままで強制拘禁されて調査を受けた。

 この過程で、70歳になろうとする金グンスン氏は大きな衝撃を受け、気絶してズボンに失禁した。それで薜銀河氏が米憲兵に母を病院に運んでくれるように要請したが、米憲兵達はこれを黙殺して金グンスン氏を取りまいて、薄笑いを浮かべて騒ぎたてた。そして、三母娘に嫌疑がないことがはっきりすると、連行5時間ぶりに韓国警察に引き渡した。

 翌日、ソル・ウンジュ氏は龍山警察署に米軍4名に対する告訴状を提出した。この事件を担当した検事は、この事件を米軍の公務遂行を超えた犯罪と規定し、事件を調査するため米憲兵に対する召喚状を発布したが、米軍当局は「正当な公務遂行であり、暴行した事実はない」として出頭を拒否した。米軍側は、韓米行政協定で米軍が公務遂行中に犯した事件に対しては韓国政府に処罰権限がないということを悪用し、韓国政府の捜査権を拒否して結局韓国政府は何の処罰もできなかった。


集中探求 1 

米軍犯罪の実態と原因

編集者 注)米軍犯罪の具体的事例は、この本の「主要な米軍犯罪事例」参照

米軍犯罪の現状

 駐韓米軍による犯罪は、1945年9月8日の仁川に米軍が第一歩を踏み入れた瞬間から始まり、現在まで継続されている。韓国政府の公式統計によっても、米軍犯罪はざっと見積もって10万件を上回っている。これは年平均2,200余件、一日平均5件に達する驚くべき数値だ。すなわち、最小限一日5名のわが国民が米軍の犯罪行為で、はかれない苦痛を受けているのだ。

 ところがもっと驚くのは、これらの米軍犯罪がほとんど大部分処罰されていないということだ。やはり韓国政府の統計を調べてみれば、全体米軍犯罪の中で韓国政府が裁判権を行使したのは0.7%にすぎないということだ。1991年の韓米行政協定改正以後にも、韓国政府の裁判権行使率は1%にすぎない。1992年の10月から1993年の8月まで総850件の米軍犯罪中、たった10件である1.17%だけが韓国政府によって裁判権が行使された。

 そして、米軍犯罪の被害者達は損害賠償もろくにもらえない。米軍による被害に対して損害賠償を請求できるが、大部分の被害者はそのような手続きがあることさえ知らず、たとえ損害賠償を申請する場合でも最小限1年以上かかり、その手続きと規定が複雑で、実際の被害者にほとんど助けにならない。当座の治療費さえ無い相当数の被害者は、相当な時間と努力が必要な手続ができずに放棄するか、いくらにもならない合意金を受けることで終わる場合が多い。

 米軍犯罪の類型を調べて見れば、殺人、強盗、強姦、暴行、詐欺、窃盗、密輸、麻薬、放火など、あらゆる種類の犯罪を包んでいる。そして、米軍犯罪はこのような直接的な犯罪だけではなく、米軍基地の環境汚染、低質退廃文化流布、PX不法流出を通した巨大な闇市場の形成など、広範囲な形態で犯されている。

根本原因は駐韓米軍にある

 駐韓米軍は、自分達が韓国民を保護するために来ているという考えから傲慢きままに陥っている。それで彼らは、韓国民を蔑視して韓国民の人命を軽視している。この点は米軍の犯罪動機に明らかに現れるが、殺人、暴行の場合、最も多い理由が「何の理由もなく」というものだ。つまり、米軍は何の理由もなく、公然と、些少ないさかいの果てに韓国民の命を奪い、暴行するケースが少なくないということだ。

 また、米軍は世界平和に寄与するという美名の下に、非常に攻撃的に教育、訓練されている。米軍犯罪を最も多く起こしている駐韓米軍の主力、米第2師団の標語が「出生は偶然」(Live by Chance)、「愛は選択」(Love by Choice)、「殺人は仕事」(Kill by Profession)というのは決して偶然ではない。また、駐韓米軍の大部分が下層出身で低質文化に浸っているということも一つの理由になっている。米軍の相当数がハーレムなどの貧民街出身で、彼らはただ金を稼ぐために韓国に来ている。

 このような米軍の犯行をそそのかすのは、米軍犯罪者に対する米軍当局の態度だ。駐韓米軍当局は、当然刑事裁判で処罰されるべき米軍人に対しても、大部分は注意、譴責などの行政的懲戒で処理している。彼らには米軍犯罪による韓国人の被害は些少な問題にすぎない。

日本は主権国家! 韓国は植民地?

 

日本

95年の駐日米軍による少女レイプ 事件と関連して米国がとった態度

韓国

92年の尹今伊氏殺害事件、10万件を超える駐韓米軍犯罪に対する米国側態度

駐日米軍司令官
/駐韓米軍司令官
『この惨たらしい悲劇は人間性に反する暴悪な行動で、米軍の制服を着た我々すべてを非常に恥ずかしくさせている 『地下鉄忠武路駅乱動事件などで米軍は加害者ではなく被害者だ。米軍の些少な問題を否定的に拡大させている』
駐日米国大使
/駐韓米国大使
『被害者と家族、沖縄の住民に深く謝罪する。(被疑者である米軍と)同じ米国人として恥ずかしく思う』 『駐韓米軍犯罪は犯罪自体に問題があるのではなく、韓国の言論が歪曲して韓国民の反米感情を誘発させるところに根本的な原因がある』
ビル・クリントン
米国大統領
『我々は非常に遺憾に思っており、日本人に対するどのような誤りや侮辱も無視しない』 なし
その他の官吏達 マイク・マカリー、ホワイトハウス代弁人『米国政府は、極めて悲劇的な事件を経験した家族に対する正当な補償問題を検討しており、事件の再発防止のために追加措置も検討中』 ペリー米国防長官『我々は韓米関係に批判的な市民達を教育するための特別な努力をするべきだ』
とった措置 駐日米軍の訓練を一日中止する「反省の日」を宣布、沖縄駐屯米軍と沖縄住民の『よい隣人』になるための討論など、二日間の公式『反省の日』行事 51年間一回もなし

 

 最近引き続いている米軍犯罪に対して、駐韓米軍司令部は声明を通してすでに、「米軍の些少な問題」と云々した。そして、尹今伊氏殺害事件の時、「尹今伊共同対策委員会」の公開謝罪と犯罪根絶対策を促求する公開書簡に対して、当時の駐韓米軍司令官リスカシ(Robert W.Riscassi)は、一言の謝罪や反省もなく次のように堂々と語っている。

 『最後に、両国間の緊密な紐帯関係の一環として米軍がここに来ているという事実に留意しておいてほしいのです。40年以上にわたる我々の友邦関係を通して、実に数十万名の米軍が大韓民国の防衛に寄与するために彼らの家と家族を離れてここに来ており…』

 そして、米軍当局は口さえ開けば自分たちに有利な「韓米行政協定の遵守」を叫びながら、韓国政府の処罰権を遮りながらも自分たちが守るべき項目に及んではこれを完全に拒否している。

無気力な韓国政府

 韓国政府の米軍犯罪に対する0.7%の裁判権行使率は、韓国政府が米軍犯罪をほとんど放置しているという証拠になる。実際に、一線の警察では、米軍犯罪が発生すれば公正な捜査をするよりも被害者をなだめるのに汲々とし、甚だしくは申告さえ拒否する事例が少なくない。また、裁判権行使において決定的な位置にある韓国検察は、殺人、強盗、強姦などの重犯罪を除外した事件に対しては、事件が軽微だとして裁判権行使を放棄してきた。内国人の場合ならば当然拘束起訴されて厳重処罰される事件が、米軍によって引き起こされればいつの間にか「軽微な」事件に変わるのだ。

 結論的に、韓国政府の米軍犯罪に対する態度は、次のように整理できるだろう。『駐韓米軍は韓国の国家利益のため駐屯しており、米国から多くの助けを受けているのに、我々が些少な問題をあれこれ言い立てれば外交上の摩擦を生じ、韓国の国家利益が損傷される。であるから、米国の立場を十分に考慮しなければならない。』

米軍犯罪の免罪符、韓米行政協定

 米軍犯罪者に対する処罰を実質的に遮っているのは韓米行政協定だ。韓米行政協定の数多い不平等条項によって、米軍は法の審判から逃れることができる。韓米行政協定は、その不平等性が世論の指弾を受けて1991年に改正されたが、肝腎の重要な本文と合意議事録は手を付けないまま、下位規定である了解事項だけ部分的に改正した、「見せかけ改正」だった。もっとも目につく内容は、ほとんどすべての米軍犯罪に対して韓国政府が裁判権を行使できるようになったが、しかし、これも他の毒素条項によって実質的に制限されている。


3.刑事管轄範囲の甚だしい拡大

本協定 22条1項

 合衆国当局は合衆国軍隊の構成員、軍属及び彼らの家族に対して、合衆国法令が付与 したすべての刑事裁判権及び懲戒権を、大韓民国内で行使する権利を持つ。

ここで最も大きな問題は、家族の範囲を行政協定はあまりにも拡大しているということだ。

 本協定第1条 ハ)項に、家族とは「配偶者及び21歳未満の子女またはその他の親戚で、その生計費の半額以上を米軍軍隊の構成員または軍属に依存する者」と定義している。しかし、その他の親戚の明確な概念規定が別に無いため恣意的解釈の余地があり、生計費の算出根拠も無いので乱用される素地が多い。また、招請契約者は原則的に行政協定の刑事裁判権適用対象者ではない。ところが、米軍の任務遂行に寄与する彼らの役割を認定するという但し書き規定を上げ、彼らが犯罪を犯した時、逮捕、拘禁、自由刑の執行、被告人の権利に対しても米軍と同一な待遇(特恵)を受けるようになっている。これは他国と米国が結んた協定には無い刑事手続き上の特権だ。

 しかし、1960年の米国最高裁判決によれば、軍属と家族を軍法会議で裁判することは違憲だとした。ましてや、合意議事録には、平和時の合衆国軍当局は、軍属及び家族に対して有効な刑事裁判権を持っていないと明示しているため、彼らに対して駐韓米軍側は行政的懲戒措置のみが可能であり、彼らの犯罪に対する裁判権が無いので、裁判が必要な場合は本国に移送せねばならない。しかし、米軍当局がその被疑者を米国に送還し裁判に回付する可能性はない。

4.犯罪米軍の拘束捜査は不可能

本協定 第22条5項(ハ)

 被疑者が合衆国軍当局の手中にある場合には、すべての裁判手続きが終結し、また、大韓民国が拘禁を要請する時まで合衆国軍当局が継続これを行う。その被疑者が大韓民国の手中にある場合には、その被疑者は、要請があれば合衆国軍当局に引き渡されねばならず、すべての裁判手続きが終結され、また、大韓民国当局が拘禁を要請する時まで合衆国軍当局が継続拘禁する。

 米軍は殺人、強盗、強姦など、どんなに重大な犯罪を犯すとしても拘束捜査できない。拘束捜査は、犯罪に対する司法的処罰の意味以外にも、犯行に対する初動捜査を通して真相究明するのに相当な役割をする。ところが、すべての事件に対して拘束捜査をしなければ、米軍はいくらでも証拠を隠滅したりアリバイを捏造するなど、真実を究明すべき捜査にとんでもない困難を加重させる。韓国人の場合は、全治3週間以上の暴行事件などの軽微な事件で罪が確定していない状態でも、一旦監獄に収監され罪人扱いを受けることと余りにも対照的だ。

【事例1】 尹今伊氏殺害米軍

 今は故人になられた文益煥牧師。統一神学の先駆者、朴淳敬博士。43年を超える期間獄中で苦しみを味われている長期囚の先生方を考えれば、あきれるばかりだ。社会的批判世論にも拘わらず、統一のために一生を投じられた先生方を拘束するのに躊躇することがなかった韓国検察が、呪わしい殺人を犯した尹今伊氏殺害犯ケネス・マイケルを拘束捜査しなかった。ケネス・マイケルは92年10月28日の犯行当日から、1審、控訴審(2審)、上告審(3審)、すべて終わった94年5月17日に、やっと韓国の監獄に収監された。犯罪発生日からなんと1年6ヶ月が過ぎた後だった。

【事例2】 実刑宣告を受けた米軍属、米国に逃走

 韓国人女性を凶器で刺した嫌疑で不拘束起訴され、1審裁判で実刑を宣告された米軍属が、実刑宣告直後に米国に逃走した。95年4月13日、ソウル地裁で傷害罪で懲役8ヶ月を宣告された米軍属ジェイムス・K・リー(34歳)が、宣告直後である当日、民間人旅券を利用してノースウェスト航空便で逃走した。リーは韓米行政協定によって不拘束捜査を受け、宣告公判当日も米軍憲兵の護送を受けながら帰った。

 この事件は、米軍当局の犯罪米軍人に対する身辺管理のずさんさを現したことは勿論、裁判所の最終判決が終わる前に拘束できない現行協定の問題点を赤裸々に現した事件だ。リーは、94年4月に韓国人女性の友人であるヤン某氏(24歳)を、心変わりしたという理由で自分の車に強制的に乗せ、アパートに引っ張って行き顔を殴って服を無理矢理脱がした後、刃物で刺して5pの傷を負わせた。

5.収監中の米軍人も米国が要請すれば米国に引き渡してやる。

本協定 第22条7項 (ロ)

 大韓民国当局は、大韓民国の裁判所が宣告した拘禁刑に服役している合衆国軍隊の構成員、軍属または彼らの家族の拘禁引き渡しを合衆国当局が要請すれば、この要請に対し好意的考慮をしなければならない。

 犯罪米軍人に対する拘束捜査をできないだけでなく、一歩進んで、裁判所の宣告に対する刑執行を制限させる条項だ。結局、犯人が韓国の裁判所で懲役刑を受け韓国で服役している時、米軍側から身柄引き渡しを要請されれば、わが国は「好意的考慮」をするようになっており、刑期を全部経ないでも米国に帰ることができるようになっている。そうであるならば、92年10月28日に東豆川で尹今伊氏を残忍に殺害したケネス・マイケル2等兵は、94年4月29日に最高裁判所判決が確定して(懲役15年)現在天安刑務所に収監中であるが、15年を監獄で暮らさなくても、いくらでも米国に送還できるということではないのか?

【事例3】 8・15特赦で釈放された米軍属

 93年5月29日、ソウルの端草洞・レーベンホープで、米軍人ジョン・ロジャー・サロイス兵長は、ホープ(店)の女主人である金菊恵氏を強姦し、全身をさんざん殴打して金菊恵氏を2ヶ月余りの間脳死状態に陥れた事件があった。この事件でロジャー兵長は、韓国の警察と検察の無誠意な捜査で懲役2年6ヶ月を宣告され、95年初めに天安刑務所に収監された。ところが、ロジャー兵長は刑量を終えず、その年の8月15日特赦で釈放された。金泳三政府が、95年の光復節50周年を迎えて大々的な赦免・復権措置を断行したが、民主と統一のために闘った良心囚は極少数だけ釈放し、第6共和国の非理に連座した人士達を大挙釈放して社会的な非難を浴びた。その騒々しい宣伝の隙に、密かに鉄面皮な犯行米軍人が釈放されたのだ。


集中探求 2

罪を犯した米軍人達、監獄ではどのように過ごしているか?

 韓国政府が米軍人を収監するためには、韓米合同委員会で合意された「最小限度の水準」を充足させねばならない。ここで最小限度の水準とは、運動場があらねばならず最小72u(約2坪)の独房と水洗式トイレ、洗顔台、シャワー設備及び布団とベッド、調理施設などが揃っている状態を意味する。

天安刑務所の米軍収監施設

 95年5月25日現在、国内刑務所に収監中の米軍人既決囚は全部で12名だ。この中で、天安刑務所の女子監獄に収監された女性3名を除外した残り9名は天安刑務所で受刑生活している。この数字も94年の4〜5名に比べれば増えたほうだ。ここの米軍専用刑務所は少年刑務所の一棟を隔離して作った独房20余りで作られている。独房の大きさは2.98坪だが、4〜5坪の監房で10名ほどが雑魚寝しなければならない韓国人在監者に比べれば完全にホテル級といえる。

 各房ごとに水洗式洋便器とベッドは勿論、ラジオとカセット、あげくにTVまで揃えている。すこし前からは、個人的にコンピュータセットを置いてゲームを楽しんでいる米軍人も多い。彼らの食事も「特級」だ。基本材料(飲食)は平澤、烏山などの米軍部隊から直接運んでくる。各種の肉と肉加工類、野菜と小麦粉などが主要品目だ。別途に用意された専用食堂には、ガスレンジなどの調理施設と大型冷蔵庫も揃っている。このような現代式キッチンで、囚人達は思いのまま飲食を作り「食事」する。1食3品の粗食を、与えられるままに食べねばならない韓国人の囚人とは雲泥の差だ。

刑務所で乱動をはたらく尹今伊氏殺害犯

 92年10月28日、東豆川で尹今伊氏を無惨に殺害した米軍人ケネス・マイケルが、刑務所内で乱動をはたらいた事件が後になって明らかになった。現在、彼はさる94年に15年刑を宣告され天安刑務所に収監中だ。彼が犯した犯行に比べれば罪の代価である15年刑は不相応に少ない。それにも拘わらずマイケルは、さる95年5月5日、後悔するどころか盗人猛々しく刑務所で乱動をはたらいたのだ。

 天安刑務所長が95年12月12日に作成した書類には、『被告人マイケル・ケネス・Lとトープ・リチャード氏(トープもまた殺人未遂犯だ。彼は93年12月16日に京畿道坡州郡にあるエドワード基地前で、タクシー運転手、韓昌烈氏の首を後ろから刺して暴行を加えた。彼はこの事件で懲役5年の宣告を受け天安刑務所に収監中だ。)は、駐韓米軍人としてそれぞれ天安刑務所に服役中である者達だが、被告人達は共同謀議し、95年5月5日の10時30分ごろ、天安刑務所外国人収容舎棟第5舎で、当日は子供の日で休務のため、刑務所の囚人達に対する主・副食及び手紙伝達が次の日に遅れるという理由で教導官達を罵りながら、被疑者マイケルは、ガラスのコーヒー瓶を掴んで廊下のアクリル窓に向かって投げて壊し、同リチャードは廊下にあった粉末消火器を刑務所の教師、朴ソンムン、教、衛宋チャンホに向け噴射し、続いてマイケルは廊下奥の食堂の前にあった粉末消火器を掴んで教導官達及び廊下に向かって噴射させるなど、公務所で使用する物件であるアクリル窓一つを損壊させ、その効用を害して朴ソンフンなどの公務執行を妨害した』と事件を報告している。

 この事件でマイケルとトープは、公務執行妨害、公用物件損傷の罪名で追加起訴され、96年1月15日に懲役8ヶ月の宣告を受けた。マイケルとトープは刑務所側の収監者待遇に不満があり乱動をはたらいたのだ。しかし、米軍専用刑務所の特恵を見る時、彼らの乱動が根拠がないものであることがわかる。

 95年6月4日付けの日曜新聞によると、『米軍囚人が享有する特恵はこれに留まらない。囚人であれば誰でも義務的に出るようになっている使役(作業)も、彼らには他国の話しだ。刑務所側は米軍囚人達も例外なく使役に出ていると明らかにしているが、事実上相当数の米軍人が使役を無視しているというのが教導官達の耳打ちだ。』

殺人罪の米軍属のために数千万ウォンをかけて豪華版独房を作ったソウル拘置所

〈朝鮮日報5月10日付け報道〉

 暖房施設とベッド、調理施設、簡単な体力鍛錬施設、様式便器・・・。盧泰愚前大統領が収監されているソウル拘置所に〔レジャー用コンドミニアム〕を連想させる監房ができた。この部屋を利用する被疑者は、韓国検察によって殺人嫌疑で拘束捜査を受け、さる2月の初めに起訴された米軍人ヘンリー・マッキンリー氏。

 マッキンリー氏は、拘置所収監直後のさる1月頃、韓米行政協定(SOFA)を根拠に拘置所施設改善を強く要求したとのこと。法務部側によれば、彼は『施設が滅茶苦茶だ』、『こんな状態では裁判を受けられない。』という要旨の抗議をしたということだ。拘置所側はこの抗議を受け入れざるを得ず、さる4月に大々的な監房修理に入り、最近、施設改善を終えた。ソウル拘置所には、調理施設や簡単な体力鍛錬施設などは勿論、暖房施設もろくに無かった。法務部はこの修理費用に何千万ウォンかかったとだけ明かすだけで、具体的にいくらかかったかは明らかにしなかった。マッキンリー氏はこの他にも自分が収監されている監房の周辺まで全部空けてくれることを要請したが、この部分は拘置所側は受け入れなかったということだ。

 法務部関係者は『韓米行政協定に、監房施設の規模と施設などまで細密に規定されており、受け入れざるを得なかった。』として『一旦、韓米行政協定改正協商を行っているだけに、既存の協定は守る方が良いと判断して修理することになった。』と語った。


6.韓国の司法制度と行刑制度を無視する規定

1.合意議事録第22条第9項(ト)に関して

 合衆国政府代表が参与しない時に被疑者または被告人が行った陳述は、被疑者また は被告人に対する有罪の証拠として採択されない。同、代表は被害者または被告人が 出席するすべての予備捜査、調査、裁判前の審理、裁判自体及び裁判後の手続きに参 与することができる権利を有する。

 米国政府代表の参与が無い場合、裁判をする意味が無いようになっている。弁護人でもない単純な米国の役人が参与しなければ、米軍人に対する予備捜査、調査または裁判進行がまったく不可能なのだ。米政府代表が協力しなければ、いくらでも裁判を引き延ばすことができ、甚だしくは無期限に延期できるのだ。これによって米国政府代表の立ち会いの無い米軍人の裁判進行は認定されないように作られている。

2.了解事項中、合意議事録第22条9項に関して

(ヌ) 審判に出席したり、自身の弁護において肉体的、精神的に不適当な時には審判に出席するよう要請を受けない権利

(ル) 適切な軍服や民間服で手錠を掛けないことを含めて、合衆国軍隊の威信に適 合する条件でないならば、審判を受けない権利

 これは、大韓民国の司法権を信用せず、結局は裁判を拒否する自由を米軍に付与する結果を招来している。罪を犯した犯罪者に裁判を拒否する権利を付与するとは。まして「合衆国軍隊の威信に適合する条件」という非常に抽象的な名分で裁判を拒否できるということは、到底あり得ないことだ。これは、本質的には大韓民国の主権を無視し、侵害していることにほかならない。米軍部隊内で、韓国のタクシー運転手を現行犯でないにも拘わらず、明白な捜査や証拠もなしに有無を言わせず手錠を掛けて連行する米軍の態度と大きく対照をなしている。

【事例】 チョン・ヤンファン氏事件

 さる94年1月28日、駐韓米軍専用タクシー(別名:アリランタクシー)運転手チョン・ヤンファン氏が、米軍憲兵4名によって身体検査を受け、手錠を掛けられたまま強制的に連行された事件が発生した。チョン氏は当日、ソウル、漢南洞の外人アパート前の道で米軍ハリソン上等兵と車線で言い争った。当時、ハリソン上等兵は英語でしきりに暴言を吐き、チョン氏もこれに腹を立ててユー・トゥー(You Too)と応対した。その後、そのまま何事もなく分かれたが、チョン氏が客を乗せて米8軍営内に入ったところ、理由も判らないまま重罪人の扱いを受け連行されたのだ。ハリソン上等兵が米軍当局にチョン氏から暴行を受けたと虚偽申告をするや、米憲兵隊が無条件連行したのだ。

 当時、米憲兵隊は、有無を言わさずチョン氏を身体検査し、後ろ手に手錠を掛けて連行しており、相当な時間手錠を掛けられたまま調査を受けたが、何の嫌疑もないことが明らかになるや、連行3時間ぶりに釈放した。(この事例は、米軍と比較的接する機会が多いタクシー運転手に珍しくない事件だった) 米軍は合衆国軍隊の威信に適する条件でなければ、韓国の司法権までも拒否する権利を法的に明示しておきながら、韓国の民間人に対する態度は、強大国の横暴を前面に立てた人権蹂躙と権力乱用そのものだ。

7.米軍が1審で無罪を受ければ検察は控訴ができない(上訴権剥奪)

本協定 第22条8項

 被告人が、本案の規定に従って大韓民国当局や合衆国軍当局のどちらか一方の当局に よって裁判を受けた場合において無罪判決を受けた時、または有罪判決を受け服役中に あったり服役を終了した時、またはその刑が減刑されたり執行を停止された時、または 赦免された時には、その被告人が他方の国家当局によって大韓民国領域内で同一な犯罪で2重の裁判を受けない。

 わが国の検察は、米軍が有罪判決を受けなかったり無罪で釈放された判決に対して、独自的上訴権がないということだ。一国の主権の象徴といえる司法権が、まったく役に立たないということだ。上訴を通して事件の真相を究明する権利があらかじめ封鎖されている。国民の人権を侵害する内容が合法化されている代表的規定だ。我々の検察が上訴権を取り戻し、犯罪米軍人を徹底して断罪できるよう、この規定は至急に改正されるべきである。韓国の主権を回復するためにも勿論だが、罪を犯した米軍人の処罰が明らかになる時、同じ犯罪が再発されなくなるためだ。

【事例】 偉大な(?)コックスとスモールウッド

 1967年2月20日の夜、京畿道平澤郡ソンタン村シンジャン里308番地で、コックス下士官とスモールウッド上等兵は、厳ギョンス嬢の家に火をつけて放火及び暴力罪で裁判に回付された。この事件は、韓国政府が米軍に対する裁判権を行使した最初の事件であったが、これは1967年2月9日の韓米行政協定が発効したことによるものだ。

 ところが、コックスは裁判中にも部隊外を好きなように出入りし、目撃者達を訪ねながら『不利な陳述をすれば家族を皆殺しにする』と脅迫した。裁判で李建介検事は懲役3年を求刑したが、裁判所は無罪を宣告した。その主要な理由は『コックス下士官が初めから終わりまで犯行を否認しており、その真実性を認定できる』という、とんでもないものだった。犯人が罪を最後まで否認するといって無罪が認定できるのか? 検察はこの判決に当然控訴すべきだったが、上の条項のために検察の権利を行使できなかった。結局、コックス下士官らは無罪を「確定」されのだ。

8.敵対行為発生時、韓国政府は裁判権を行使できないこと

本協定 第22条11項

 敵対行為が発生する場合には、刑事裁判権に関する本協定の規定は即時その適用が停 止され、合衆国当事局は合衆国軍隊の構成員、軍属及び彼らの家族に対する専属的管轄権を行使する。

合意議事録 第22条第2項(ロ)に関して

1.大韓民国が戒厳令を宣布した場合、本案の規定は戒厳令下にある大韓民国の地域 においてはその適用が即時停止され、合衆国軍当局は戒厳令が解除される時まで、このような地域で合衆国軍隊の構成員、軍属及び彼らの家族に対して専属的管轄権を行使する権利を有する。

 まず、敵対行為の概念が漠然として米軍当局によって恣意的に解釈される素地がある。南北が分断され軍事的緊張関係にあるわが国の状況で、敵対行為という解釈が乱発される可能性が一層高い。まして、敵対行為が発生したとして、すぐ韓国の裁判権が全面的に中止されねばならない理由がまったくない。

 NATO協定の場合、敵対行為が発生する場合、裁判権行使に対して再検討することを規定している程度で、米日協定の場合には、どちらか一方が60日前に相手側に予告することで裁判権条項の適用を停止できるが、これに変わる適当な規定を合意するために即時協議しなければならないとなっており、わが国の場合と相当な差がある。

 1980年の光州民衆抗争当時、戒厳令が宣布された関係で韓国側の裁判権が全面中止された。政府統計に現れた80年の米軍犯罪は1,679件だった。だから、1,678件の犯罪はすべて米軍側で裁判を行ったが、その結果がどのようになったのか、犯罪米軍人はどんな処罰を受けたのか、何の報告もなされていない。


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