自民、自由党の連立内閣は、昨年四月に国会に提出された新ガイドライン(日米防衛協力のための指針)に基づく「周辺事態法案」を一月開会の通常国会で通過させるために力を注いでいる。その背景にはクリントン大統領をはじめ、米当局の早期成立要望もからんでいる。
この法案はひと言でいうと、アジア・太平洋地域で米国が軍事干渉なり攻撃を開始すれば、日本も自動的に参戦して作戦協力を行う仕組みになっており、海外武力行使や集団的自衛を禁じた憲法違反だと指摘されている。
「周辺事態法案」には対象地域についての言及はないが、日本当局は第一のターゲットが韓半島―北韓であると名指ししている。では米日側が強調している「韓半島有事」とは何か。その背景には、ソ連の崩壊、冷戦の終結後、「唯一の超大国」として全世界に配備している軍事力を利用し、依然として「力の政策」による政治、経済、軍事的な覇権を追求する米国の強硬な姿勢と、そのために日本を利用し役割分担を増大させたいとするクリントン政権の狙いがある。同時に、米国の世界戦略に便乗してアジアおよび世界への膨張と影響力の拡大を狙い、経済大国から政治、軍事大国へ転進しようという日本の保守強硬勢力の打算がかいま見える。
冷戦の終結によって「ソ連の脅威」が消滅したため、米国はそれに代わる「新しい脅威」として、アジアでは自主性を堅持する北韓を「核疑惑」と結びつけて地域脅威とし、米国を頂点とする米日、韓米安保体制を強化して包囲網を強めてきた。昨年九月の北韓の人工衛星打ち上げに際して、ひとり日本が「ミサイル」説に固執したのも、「宇宙の平和利用」という人工衛星の役割を否定し、「北朝鮮のミサイルの脅威」を宣伝して「周辺事態法」を早めるためであった。
「周辺事態法」の制定はいわば仕上げで、すでに米日間では韓半島有事に対処した、さまざまの共同作戦計画が練られている。九三年―九四年の「北韓核開発疑惑」の際には、例えば「五〇五一」など一連の米日共同統合作戦計画がつくられた。防衛庁が九四年七月に作成した極秘指定「K半島事態対処計画」には「対米作戦支援」「対米後方支援」などが含まれている(「朝日新聞」九六年九月十五日付)。
その中には、米海軍・海兵隊の北朝鮮沿岸への上陸作戦に先立つ海上自衛隊の掃海や支援出動など、集団自衛権の行使や海外武力行使にあたる軍事行動のマニュアルが組み込まれていた。さらには、「難民警戒」(陸上自衛隊)、北韓海域までの進出、対米軍事協力(海上自衛隊)、北韓戦略拠点への直接攻撃(航空自衛隊)なども検討された(「アジアの中の自衛隊」)。
「リムパック八六」(環太平洋演習、参加国=米、韓、日、カナダ、豪州、チリ)も対北韓多国籍軍の作戦であった。特殊部隊潜入による情報活動、在留外国人・公館の撤退作戦、双方間の海上、空中作戦、上陸作戦・侵攻による制圧、停戦後の処理など、実戦さながらのシナリオであった。
米国を頂点として韓日は軍事的に連結されている。在韓国連軍の司令部はソウルにあるが、後方司令部は座間(神奈川県)にある。韓米日の対空管制組織は共通の軍事暗号で一元化されている。有事には在韓米軍と在日米軍は、ともに米太平洋軍司令部の指揮統制下に置かれる。
昨年の十、十一月には北韓をターゲットとする「フォール・イーグル」などの韓米合同演習と米日共同統合演習が東海(日本海)上などで重複・連動して行われた。「フォール・イーグル」では、韓国にある米軍の指揮システムが破壊された場合を想定し、横須賀基地での米第七艦隊旗艦ブルーリッジから直接に作戦指揮が行われた。これは新ガイドラインの米日共同作戦において、日本が対北韓作戦の第一線基地になっていることを意味する。
こうした「周辺事態法案」に対して、アジア諸国民は一様に警戒心をあらわにしている。北韓が「アジア侵略と軍事的干渉のためのシナリオ」だと正面から反対の立場を貫いており、韓国でも「銃を取る日本」「韓半島、台湾有事に日本は事実上参戦」と指摘する声が多い。中国は台湾を対象地域にしていることに強い反対を表明している。
過去に日本の侵略を受けたアジア諸国の国民はいま、日本の海外膨張、軍事大国化への動きを強い危ぐ心と深い警戒心をもって見守っている。
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