民族時報 第1120号(07.09.01)


【読書案内】平和渇望、血の言葉

    『愛の迷路』―サラン エ ミロ

  萩ルイ子著

 日本語の詩を本当に久しぶりに読んだ。萩ルイ子の『愛の迷路』だ。日本でも愛唱され、ロングセラーになっている崔辰熙の同名の歌を連想しながら、愛の詩を編んだのだろうかと想像しながら本を開いた。

 ところが、真っ先に目に飛び込んできた詩は、戦争に反対し、平和を渇望する詩人の、血まみれの叫びだった。過去の侵略戦争を反省しない日本に対する容赦ない批判だった。

 「(前略)使い捨てにされ 最も深刻な被害に呻吟(しんぎん)する人間たちは/旧日本軍従軍慰安婦だった女性たち(中略)//平和は 真夏に冷たい飲み物を/喉から手が出るほど欲しがるように/欲しがらなければ 手に入らない 届かない(後略)」(また夏が来て)

 胸に重く響き、共感の波が広がる言葉だ。

 「(前略)奴隷根性が倒錯してしまい/靖国神社を 六回も参拝した その後釜には/A級戦犯の孫が首相に選出さるのだ/沈みゆく国に まっとうな生存本能に/目覚めて欲しいのです(後略)」(黄昏ジャパン)。

 有事法案に賛成した議員たちを批判し、ブッシュの哀願で自衛隊がイラクに派遣された不条理を嘆く(無軌道な国策に反対する詩)。

 その一方で詩人は、日本と朝鮮(韓国)の狭間で葛藤する。

 「(前略)戦争などしたくもないのに植民地にされた/台湾と朝鮮 おお 何行を書いても足りない!(中略)//(中略)大日本帝国に 母の祖国に」(炎暑)。

 日本が朝鮮を侵略した事実が恥ずかしく、胸痛い。しかし――

 「(前略)愛する 朝鮮半島よ 日本よ/憎悪を超えて 抱き合おう 生存をかけて!」(生存をかけて)。

 詩人にとっては、日本ももうひとつの祖国だ。朝鮮人の父と日本人の母の間に生まれ、兄は子どものころ民族差別を経験する。日本人として育った彼女は、成人してから朝鮮人としての半分を認識するようになり、葛藤(かっとう)しながら韓国語を学習する時をへて、書き継がれた詩である。そのため、日本が過去を清算し、韓日が平和的な関係になるよう願う思いは、より一層切実なのだ。そして何よりも、彼女の詩にはその内面がありのままに表出されており、情熱と愛があふれる。

 本詩集のT部九編は、彼女の第一詩集「幼友達」から転載し、大幅に手を入れ、改題したものだという。U部十五編は今世紀に書いた詩編だ。詩人が自作詩集で匹敵する著作がないと確信する第三詩集『わたしの道』(清風堂書店、千八百円)は、詩人の豊かな感性と詩語、率直で熱い情熱を体感できるだろう。

 日本と朝鮮を祖国に持つことになった著者の来歴とその詩編は、読者に大きな共感を与えるだろう。

(金知栄)

(発行 新幹社、定価千八百円)


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