【解説】米、「圧迫から関与」へ政策転換/冷戦的安保秩序が地殻変動
加速する朝米関係改善と北東アジアの変化
マカオの銀行バンコ・デルタ・アジアに凍結されていた北朝鮮資金(約二千五百万ドル)がニューヨーク連邦銀行(中央銀行)を経由して送金された。これはブッシュ政権が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対する政策を、「圧迫」から「関与」に転換させたことを示すものだった。
北朝鮮は、これとともに、ライス米国務長官の指示によるヒル国務次官補電撃訪朝を、米国の確固たる政策変更の指標と見なして、迅速に対応した。七月十六日には寧辺で稼動中の原子炉と関連核施設の活動を停止したと明らかにし、IAEAのエルバラダイ事務局長は同日、それを確認した。予想を超える速さで六者協議の二・一三合意(初期段階措置)の履行へ動いたといえるだろう。
六者協議の核心は朝鮮半島の非核化だが、それを超えて朝米関係の正常化―朝鮮戦争の終戦・平和協定締結、朝米国交正常化―へと動き出している。
平和体制に関しては昨年十一月、イラク―中東政策の破たんから、対北政策を「圧迫から関与」へと転換させつつあったブッシュ大統領が口火を切った。彼は十八日にベトナム・ハノイで行われた韓米首脳会談で、「北朝鮮の核廃棄時には朝鮮戦争終戦宣言のほか、金正日・国防委員長と終戦文書に署名する意向がある」と述べた。これがいま具体化しつつある。
第六回六者協議の首席代表協議が七月十八日から二十日まで、北京で開かれた。
この協議は朝米の主導、特に米国の強い意向のもとで開催された。朝米の親密さは、協議前日の十七日、金桂寛・外務次官とヒル国務次官補が双方の大使館を行き来し、三回にわたって対話を行い、協議期間中も数回会い対話したことにも現われている。朝米は一連の協議で、突っ込んだ意見交換をしたと報道されている。十九日の韓国連合通信によると、米側はブッシュ大統領の任期内に関係正常化を実現するため、北朝鮮が核兵器を含むすべての核開発計画の放棄を決断するなら、経済支援や体制安全保障措置を提供する意思を示したという。北朝鮮側は大いに関心を示したという。今後、北朝鮮が核施設の無能力化だけでなく核放棄を決断した場合、北朝鮮が取る措置を無能力化と廃棄に分け、これに相応する措置も段階的に提供するという内容について米朝間で交渉が進むと展望されている。
今回の六者協議首席代表会議は、米国がこうした提案を北朝鮮に直接伝達するための場だったと見られる。六者の集合となったのは、朝米二国間の突出の印象を弱め、援助などには関係国を動員したいという米国の思惑もある。
二十日に発表された共同報道文は、「朝鮮半島非核化と関連国間の関係正常化、北東アジアの恒久的平和と安定のために、次の段階の措置に関して率直で実質的な討議を行った」として、@六者は、九・一九共同声明と二・一三合意上の公約を誠実に、履行することを再確認したA北朝鮮はすべての核計画の完全な申告とすべての現存する核施設の無能力に関する公約を誠実に履行することを再確認したB重油九十五万トン相当の経済・エネルギー・人道的支援が北朝鮮に提供されるCすべての参加国は「行動対行動」の原則により九・一九共同声明と二・一三合意に明示された各自の義務事項を履行することを約束した――と明らかにした。
また、スケジュールとして、@八月末以前に作業部会の会議をそれぞれ開催するA九月初めに第六回六者協議二段階会議を開催してロードマップを作成するB二段階会議に続いて共同のコンセンサスの履行を確認して促進しながら、北東アジア安保協力を模索するために閣僚級会議を開催する――とした。
六者首席代表団協議前に行われた米側の重大提案は、金次官のレベルで処理できないものであるがゆえに、共同報道文の内容は一般的になったといえるだろう。
とはいえ、金桂寛・外務次官は、何点かのヒントを残して二十一日、北京を後にした。金次官は空港での記者団とのやり取りのなかで、「寧辺核施設を解体するなら軽水炉を提供すべきだ」と述べた。また、第二段階措置のうち、核計画の完全申告に既存の核兵器が含まれるかについて「信頼構築がなされるかをみながら考えることだ」と述べ、核兵器廃棄に向けた論議の前に、朝米国交正常化など関係改善が必要であるとの立場を改めて強調した。そして「問題解決の基本は重油ではない。政策を変えろということだ」と指摘し、米国によるテロ支援国指定解除、日本の朝鮮総連弾圧、対北強硬路線の撤回などを求めた。
朝米の関係改善はますます加速している。それは、朝鮮戦争停戦後、半世紀を超えて固定化してきた冷戦的な安保秩序の地殻変動をもたらし、相互尊重と平和共存を基調とした北東アジアの誕生をもたらすだろう。しかし、日本政府は北朝鮮への圧迫と対決に固執している。日本の朝鮮半島政策を是正させる運動の重要性はますます高まっている。
(禹英信記者)