民族時報 第1115号(07.06.15)


【論説】民族内部の合意履行すべき/問題は米国の対北敵視政策

    「わが民族同士」で停滞を打破すべき

 五月二十九日から一日までソウルで開かれた第二十一回南北閣僚級会談は、共同報道文を発表することで完全な「決裂」とはならなかったが、実質的討議に入ることができず、また次回日程も決められなかった。

 会議の直前に南側は、北側が「二・一三合意」の「初期段階措置」を履行していないとして、第二十回会談と南北経済協力委員会で合意した、五月末を期して行うことになっていた四十万トンのコメ支援を、「国民の理解がえられない」として延期を表明した。これに対して北側は、民族内部の合意を履行すべきだとして強く反発したためだ。

 昨年七月の北側のミサイル発射訓練直後に開かれた第十九回会談でも、南側は今回の会談と同じように、米国の意向にそって合意していたコメと肥料の人道支援を撤回した。そのため北側は離散家族の再会事業の打ち切りを通行するなど、南北関係が完全に停滞することになった。

 しかし今回、「初期段階措置」の履行が遅れているのは、米国による北朝鮮に対する金融制裁の解除が行われず、マカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア」(BDA)に凍結された北朝鮮資金が送金されていないため、朝米間で「行動対行動」の原則が実行されていないからだ。問題は米国にあり、南北間の合意に別の問題を絡めるべきではないとの北側の主張には一理ある。

 そもそもBDA問題は、一昨年九月の六者協議の「九・一九共同声明」(北朝鮮の核放棄、朝米・朝日関係正常化を並行して推進する合意)にもかかわらず、ブッシュ政権が共同声明の履行よりも制裁強化による体制転換に執着して金融制裁を発動したために生じた問題だ。要は対北金融制裁を解除するか、しないのか、という米国の問題なのである。ブッシュ政権は昨年十月の北朝鮮の核実験と、十一月の中間選挙での与党・共和党の惨敗というダブルショックに加え、イラクの内戦化による政策の破たんによって、北朝鮮との交渉による核放棄・核拡散防止政策へと転換せざるをえなかった。その具体的な形が、BDA凍結資金の解除と「初期段階措置」の合意だった。「初期段階措置」の履行は、BDA問題の完全解決=金融制裁の解除が前提の合意だったのである。

 米財務省は三月、BDAを「資金洗浄にかかわった金融機関」として、米国の金融機関が取引してはならないとの制裁を決定した。その一方で、凍結された北朝鮮の資金の処理については、マカオ当局に一任するとした。ところが、米国の制裁を恐れて、中国銀行をはじめ、北朝鮮の資金を受けるという銀行が現れなかった。凍結資金の送金問題が「凍結」してしまったのである。

 ところがすでに一月、ドイツの有力紙は北朝鮮が製造したという「ニセドル」が、実は米CIAが不正工作用に製造したものだとの疑惑を提起していた。また、中央日報の三月一日付電子版は、BDAに凍結された北朝鮮の資金二千四百万ドルについてマカオ金融監督局がすべて合法資金であるとの結論を下したと報じた。

 結局、BDA問題を解決するには、北朝鮮に対する敵視政策の道具に使ったBDAへの制裁を撤回する方法しかない。そのための名分として米国は、BDAの清算や他行によるM&A(合併・買収)を中国側に働きかけていると、五月二十八日付の東亜日報が報じた。同紙によると、米側は同月二十二、二十三日にワシントンで開かれた米中戦略経済対話の場でも、BDAの親会社の区宗傑会長が退陣した上で清算などを進めるよう要請したという。六者協議の米側首席代表のヒル国務省次官補が五月三十日に訪中したのも、こうした立場を中国側に伝えるためだったことが明らかになっている。ところが中国側はそれを受け入れなかったようだ。中国としては第一に、問題を複雑にしたのは米国自身なのだから、制裁を解除すればすむという立場であり、第二に、区宗傑氏が中国の人民政治交渉会議の委員で中国の政界に影響力をもっており、区氏が米国政府に制裁の撤回を要請する請願書を提出するなど、経営権を死守する意志を明らかにしているからだ。

 こうしたなかで十日の韓国の連合通信によると、BDA凍結の北朝鮮資金を、米銀行を経由しロシアの銀行から北朝鮮へ送金する案が検討されているという。手続きは最終段階に入っており、米国側は送金に関与する銀行の不利益防止を保障するとともに、BDAと自国銀行間の取引を禁じた制裁措置を今回の取引に限り許可する方針だという。

 以上のように、BDA問題は米国の自縄自縛(じじょうじばく)によって解決が大幅に遅れたが、最終局面を迎えているようだ。問題の根本は米国にあったのであり、これは南北間の合意とは何ら関係のないことだった。

 逆に言うなら、六・一五共同宣言の「わが民族同士」の原則にしたがって、南側が今回の南北閣僚級会談で大胆に民族間の合意を重視し実践したなら、南北関係の進展のみならず、六者協議の場においても独自性と主導性を発揮できたはずである。

 六・一五共同宣言の基本理念である「わが民族同士」こそが、停滞を突破する力であることを、再度肝に銘じるべきである。

(高雄埴記者)


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