民族時報 第1071号(05.07.21)


【読書案内】「市民みんなが記者」

    『オーマイニュースの挑戦』

呉連鎬著、大畑龍次+大畑正姫訳

 「市民みんなが記者」。これは「チョ・ジュン・ドン」(朝鮮日報、中央日報、東亜日報)など「保守八、進歩二」の韓国マスコミ構図を大きく地殻変動させ、その世論支配の〈崩壊の始まり〉へと導いた、インターネット新聞『オーマイニュース』創設者、代表取締役である著者の思想であり、同紙の核心コンセプトである。

 これがどれほど革新的で、革命的なのかは、盧武鉉大統領誕生の前夜の生々しい「紙新聞」と「インターネット新聞」の激闘をつづった第三章、「これはネチズン革命だ」の「二〇〇二年大統領選挙、世論が変わる」を読めば一目りょう然だ。投票前日の午後十時、盧大統領と「候補単一化」で進んでいたはずの鄭夢準氏が支持を撤回すると、「紙新聞」の代表『朝鮮日報』は投票日の社説で、有権者に向かって「盧武鉉ではダメだ」と書いた。『オーマイニュース』は、「紙新聞」に先んじて速報を打ち、続報を流し続けた。それがネチズン=ネットワーク市民に火をつけ、投票行動を促し、浮動票の掘り起こしが夜通し、そして投票終了まで続けられ、盧大統領が誕生することになった。

 著者が指摘するように、韓国のマスコミ構図は『オーマイニュース』の成功があったとはいえ、まだまだ「保守七、進歩三」だ。だが、この大統領選挙時や〇四年三月の大統領弾劾政局のような重大局面では、インターネット新聞の「選択と集中」、「市民みんなが記者」という大衆性、締め切りと紙面に制約されない時空を超える圧倒的情報量と展開力で、保守マスコミを圧倒した。読んでいて実に痛快である。

 では、これが日本で可能か。また、ブッシュ大統領が再選した米国ではどうなのか、となると、答えはノーだ。『オーマイニュース』現象は「大韓民国の特産品」なのだ。「市民参加型ジャーナリズムを可能にした若い世代の参加精神・・・・・・この社会の改革のために自発的に参加する若いネチズン」は、いまのところ、市民民主革命の経験をもつ、韓国にだけ存在している。

 この意味で、本書は韓国社会論であり、またインターネットメディア論であり、「紙新聞」に代表される古い保守的で特権的なマスコミへの挑戦状でもある。そして、本書を読み進むにつれて、「情報受信者」に安住しがちなわたしたちの保守性もあぶりだされる。軽やかで、さわやかで、ちょっぴりほろ苦い味も楽しめる。

(英)

(発行 太田出版、定価千八百円)


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