民族時報 第1069号(05.07.01)


【読書案内】東アジア3国の近現代史

    『未来をひらく歴史』

日中韓3国共通歴史教材委員会

  各地の教育委員会に対して、「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)編集執筆の扶桑社版教科書を採択しないように要請活動しながら、割り切れなさにつきまとわれる、そんな人も多いのではないか。その原因ははっきりしている。では、どの教科書がいいのか、明確に対案を提示できないもどかしさなのだ。

 四月に文部科学省(文科省)の教科書検定を通過した中学校用教科書のうち、歴史教科書では扶桑社をはじめ八社すべてから「慰安婦」の用語が消え、十年前の検定ではすべての教科書にあった「強制連行」の記述も二社にとどまった。また、社会科の教科書では四社が日本政府にしたがって、独島(竹島)の領有権などを記述している。加害の歴史事実を〈記述しないことでの歴史わい曲〉〈歴史問題のすりかえ〉の手法が浸透しているわけである。もちろん、扶桑社版教科書は論外だ。だが、日本政府=文部省に指導された、こんなやり口で書かれた教科書が学校で使われる現実の壁は厚い。

 この壁に風穴をあけるプロジェクトが本書である。この取り組みが画期的なのは、韓日、中日など二国間の歴史対話や教材づくりを三国共通の歴史副教材づくりへと、大きく次元を発展させたことである。いわば三次元の共通歴史認識づくりは、視点の広がりと深みを読むものに与えてくれる。

 たとえば、日本の帝国主義化の土台と膨張の契機となった日清・日露戦争がひとつらなりの「東アジアを巻き込んだ戦争」として記述されることで、その戦争の性格と結果、影響がより鮮明に理解できる。また、コラムには女性や各国のマイノリティの記述もあり、新鮮で豊富だ。加えて、写真や絵、図やグラフなどもまんべんなく配置されており、見やすく飽きない編集にも魅力がある。

 本書のあとがきには、二国間でも大変な作業なのに、それを三国で行うことに予想をこえた困難があったと記されている。その苦労は報われたといえよう。しかし、三国とはいえ分断以前に一国をなしていた朝鮮半島の北半部、朝鮮民主主義人民共和国の記述が抜けていることは、今後の課題だろう。

 本書が現時点で、入手しやすい最上のテキストであるのは間違いなく、大いに活用されることを願ってやまない。しかし、学校現場の荒廃ぶりの一端を知る者としては、本書が一部でも中学校の教室で使用されるなら、たちまち「偏向教育」攻撃と処分が、学校と教師に襲いかかることも、たやすく予想できる。根本問題は、ここにあり、まだまだ根深いのである。

(英)

(発行 高文研、定価千六百円)


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