【解説】宗教右派の動員成功で辛勝/一層の強硬化を憂慮する世界
ブッシュ大統領の再選と朝鮮半島情勢
ブッシュ大統領の再選に終わった今回の米大統領選挙。ブッシュ共和党候補は三十一州二百八十六人の選挙人(約五千九百六十万票、得票率約五一%)を獲得して、ケリー候補(二十州二百五十二人、約五千六百十万票、得票率約四八%)に勝利した。しかし、今回もまれに見る大接戦だった。
今回の選挙結果の特徴は第一に、米国世論の深い断絶が明らかになったことだ。争点は「ブッシュの戦争」の是非をめぐるもので、「ブッシュ対ケリー」というよりは「ブッシュ対反ブッシュ」だった。現職で圧倒的に有利な立場のブッシュ大統領が、ケリー候補の善戦におびやかされたことは、米国世論が二分されていることを克明に示した。
第二に、ブッシュ再選が宗教右派の投票増大で実現したことだ。出口調査によると、ブッシュ陣営はイラク、経済・雇用など不利な問題を争点化させないため、道徳・倫理的価値観とされるキリスト教的な価値観の是非(同性愛結婚、妊娠中絶問題)を浮上させるとともに、九・一一以来の米国民の被害者意識をあおって「テロ戦争指導者」のイメージを売りこむことに成功したのである。したがって、ブッシュ政権第二期で一層保守的な強硬政策が次々と打ち出されるとの懸念が高まっている。
事実、ブッシュ再選で好戦的な勢力が勢いづいている。それはまず、ブッシュ大統領自身に顕著だ。彼は四日、再選後の初会見で「テロとの戦いを敵が負けるまで忍耐強く続ける」と述べ、対テロ戦争の継続と米国民の安全確保を二期目の最重要課題に掲げた。「われわれには賛否のいかんを問わず、米国民を守る」とし、国際世論に左右されず先制攻撃=ブッシュ・ドクトリンを維持することを確認した。さらに「テロリストをかくまう者はテロリストと同罪だ」とする、〇一年の米同時多発テロ事件後に宣言した原則にも言及して、イラクのフセイン政権とアフガニスタンのタリバーン政権の転覆を正当化した。そして現実に、イラクの反米抵抗勢力の拠点ファルージャへの大規模侵攻を命じた。
韓国では国家保安法廃止などの改革立法に反対し、南北対決をあおるハンナラ党が安堵(ど)した。また日本では、自衛隊のイラク派兵の延長―海外派兵の既成事実化、国連常任理事国入り、憲法第九条の廃止などを進める小泉首相が、盟友の再選を手放しで喜んだ。
ちなみに北朝鮮は十月八日の外務省スポークスマン談話で「米国でだれが大統領になろうと、それはわれわれがかかわることではなく、われわれの関心はもっぱらだれの政権であれ、どんな対朝鮮政策を実施するかにある」としていた。
ブッシュ再選後の朝鮮半島情勢を展望する場合、押さえておかなければならないのは、ブッシュ政権と有志連合の主観的意図と、客観的情勢のかい離である。
短期的にはブッシュ大統領自身が言明しているように、再選=信任として単独行動主義、先制攻撃などの従来の強硬路線を一層推し進めようとするため、緊張が高まるだろう。政権内の「国際協調派」とされるパウエル国務長官が辞表を提出し、ブッシュ大統領がそれを受理したことも、この展望を後押しする。しかし一方で、米国内に存在する堅固な強硬路線への批判は、国際社会のそれとともに容易に制御しがたいものだ。またファルージャ総攻撃でイラク情勢がさらに泥沼化する状況があり、戦争状況の悪化による有志連合のほころびも促進される。なにより、米兵死者の増大と膨大な負傷者の帰還が、米国社会の深いところから状況の転換を要求することになるだろう。そのうえ、〇四会計年度の米財政赤字は四千億ドル、〇三年の貿易赤字は五千億ドルを超えている。この「双子の赤字」をそのままにして単独行動と大規模軍事行動は、早晩不可能になる。
六者協議など朝鮮半島情勢もイラク情勢の推移に大きく影響される展望だ。政権二期目で成果を残したいブッシュ大統領が、イラクの泥沼化をかかえて六者協議の枠組みを簡単に放棄するとは考えにくい。したがって、政策の継続性のなかで共和党政権としてペンタゴンをコントロールしながら「凍結対補償」「同時行動原則」にそろりと前進する可能性も排除できない。一方で「北朝鮮人権法」を悪用した体制崩壊攻撃と、米軍再配置を推進しながら先制攻撃態勢の整備にも拍車をかけるだろう。
こうした展望に立ったとき、来年を「統一元年」にしようと約束した南北、海外同胞の民族大団結の誓いとその実現は、ますます重みを増しているのである。
(高雄埴記者)