【読書案内】自伝的「少年少女小説」
少年キムー4・24の時 (金里博著 発行・宇多出版企画 定価・千八百円)
日本帝国主義の植民地支配の鉄鎖から解放された一九四五年八月十五日、在日朝鮮人の数は約二百四十万人にのぼった。その大半が解放直後に帰国し、残りは日本での生活を余儀なくされた。その後、べっ視と迫害のなかを生きてきた「亡国の民」の子どもたちに民族の魂を取り戻させたいという願いから、朝鮮の言葉や歴史を教える自主的な民族学校が日本各地に設置された。
ところが連合国軍総司令部(GHQ)の指令を受けた日本政府は四八年、従来の在日朝鮮人教育政策を変更して朝鮮人学校閉鎖令を出し、警察を動員して暴力的に弾圧する一方、教師や子どもたちを学校から追い出した。自分たちの学校を守るため、教師や父兄、子どもたちまでが一斉に抗議行動に立ち上がったのが、世に聞こえた阪神教育闘争である。神戸では非常事態宣言が発せられ、大阪では警官の発砲で十六歳の少年、金太一君が射殺された。
本書は、この阪神教育闘争を闘った体験を持つ著者の自叙伝的な小説である。副題「四・二四の時」は、その時期をさしている。本書は朝鮮人学校の暴力的な閉鎖後、豊中市内の日本の小学校五年に強制就学させられた主人公・金東明の同級生の日本人少年が語り部となり、当局の学校閉鎖に体を張って抗議し、いわれなき差別やべっ視に立ち向かった金少年の姿、彼を理解して温かく包む日本人の教師やクラスメートとの強いきずなで結ばれた友愛を生き生きと語る。
この作品に登場する地名や学校名、人物はすべて実在したものだが、ただ事実と違うところは主人公の金少年が若くして死ぬことである。学校閉鎖に対する抗議行動に参加して市役所前に座り込んでいたところ、警察の放水車の放水で飛ばされ壁に強く打ち付けられて頭がい骨骨折と内臓破裂で即死し、その追悼式の場面でこの作品は終わっている。阪神教育闘争の過程で殺された金太一君の無残な死を深く銘記するために、あえて主人公の死と重ね合わせたものと思われる。そこに、著者自身の強い抗議の意思を読み取ることができよう。
著者は、本書を「少年少女小説」と位置づけている。凡百の同種の小説よりもはるかに刺激に満ちた教育的な名著といえる。多くの高校生、中学生に勧めたい一冊だ。
(崔寛哲記者)