民族時報 第1044号(04.09.11)


【寄稿】米国の強硬姿勢に変化なし 米日軍産複合体の利益代弁

    朝米の動きと6者協議の展望

 李鍾元(リージョンウォン、立教大学教授)

 九月末に予定された第四回六者協議の行方が危ぶまれている。朝米間の隔たりがなかなか埋まらないからだ。本会議の前に少なくとも一回は開催されると思われた作業部会は難しくなった。完全な決裂は避けたいという思惑は六者に共通しているので、本会議そのものは開かれるかも知れない。しかし非難の応酬に終わり、六者協議のプロセスは漂流する可能性が高い。本格的な動きは、やはり米国の大統領選挙以後を待つしかない情勢だ。仮にブッシュが再選された場合、柔軟な政策を期待するのは難しい。ケリー民主党候補は、「朝米間の直接対話による解決」を公約として掲げており、より現実的だ。しかし、その場合でも、共和党優位の議会、ペンタゴンを中心とした巨大な軍産複合体、それに操縦されるメディアと世論の抵抗をいかに抑え、乗り越えるかが課題となろう。米国の迷走とともに、朝鮮半島情勢は当分不安定さを免れない。

 確かに昨年以来、ブッシュ政権は少しずつ交渉論に傾いてきた。前回の会議では、CVID(完全かつ検証可能で逆戻りできない核廃棄)という用語を使わず、米国自らの具体的な提案を行った。「核の無条件の先行放棄」「見返りを与える取り引きはしない」という「原則」を繰り返していた従来の姿勢とは違うものとして注目された。もちろん内容的に、朝米間の隔たりは依然大きい。米国の提案要旨は、@平和利用を含めた完全放棄を明示し、三か月の準備期間内にすべての実態の公開と査察されれば、それと引き換えに、米国以外の関係国(韓中日ロ)のエネルギー支援の容認A核解体に向けた措置が取られた後に、経済制裁解除などに向けた協議を始め、完全な核解体後に、朝米国交正常化交渉の開始――などのようだ。要するに、米国が直接行動を取るのは、やはり核廃棄が進展した後という構図である。核兵器関連施設の「凍結」の代わりに、米国の敵視政策の放棄(不可侵の約束、経済制裁解除、テロ支援国家指定の解除)の具体的な行動を求める北の要求とは遠くかけ離れたままだ。

 形式的には、北の求める「凍結対補償」に近づいた柔軟政策のように見えて、内容的には従来と変わらぬ強硬政策、というのが前回の米国提案だったといってよい。問題は、こうしたブッシュ政権の「変化」が戦術的なものなのか、それとも構造的な限界を反映したより根本的なものなのか、という点である。つまり、前回の提案が交渉の始まりなのか、それとも単なる引き延ばし策なのかである。確かに、昨年一月のNPT再脱退以来、交渉を拒むブッシュ政権を引きずり出したのは、プルトニウム抽出などの「核カード」の圧迫であった。中国や韓国の反対で、軍事行動や経済制裁などの物理的な手段が現実的に制約されている状況で、ブッシュ政権としても最終的には交渉に応じるしかない、という見方もありうる。

 しかし、今のところ、ブッシュ政権がこれ以上の提案を出す動きは見られない。北も、ブッシュ政権との交渉可能性に見切りをつけているようだ。八月十六日、朝鮮外務省スポークスマンは六者協議への悲観的な展望を述べ、二十三日は、ブッシュ政権の一連の敵視政策を強い語調で非難した。前回の会議以来、様々なチャンネルで試みられた調整作業の「決別宣言」とも受け取れる。

 客観的にみると、ブッシュ政権の強硬政策は、核問題の解決には失敗した。昨年一月のNPT脱退と朝米枠組み合意の破たん以来、北の核能力はむしろ強化されたと見られる。では、なぜブッシュ政権は破たんした政策に固執しているのだろうか。ブッシュ政権上層部の原理主義的な強硬派(「ネオコン」)の存在、朝鮮半島情勢への無関心と無知、朝鮮政策をめぐる政権内部の分裂など、様々な要因が指摘されてきた。それに加えて、これまでの「無視政策」が米国および日本の軍産複合体の利害にも合致している点にも注目する必要があろう。核問題の根本的な解決を避けつつ、核危機を日米の軍事力強化(ミサイル防衛)や東アジア戦略体制の再編(「日米同盟」態勢の強化、そのための日本国家体制の整備など)に活用するという構図が際立つ。中国を引き込んで、北の核実験や保有宣言などの行動を抑えつつ、軍事態勢の強化を進める。真剣な交渉を避けつづける「無視政策」の背後には、こうした思惑も透けてみえる。

 こうした状況の中、北が安全保障上の観点から、核抑止力に一層傾くのは無理もない。域内諸国の共通の利益となる地域協力の可能性は遠のき、北東アジアは引き裂かれた地域となろう。これ以上、地域の安定が米国の政権交代や軍事戦略に振り回されないために、朝鮮半島の南北をはじめ、域内諸国の協力体制を真剣に模索すべきときだ。


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